第48回全日本K16級選手権
参 加:11艇
マークボート:2艇(KSCテンダー、キャプテン)
K16クラス最大のイベントである第48回全日本選手権大会が、江ノ島ヨットハーバーをベースとして、10月6日~7日の2日間で開催された。今回も、国際14フッタークラス全日本選手権との共同開催で行われた。
今年は、1日目は薄曇りで時々晴れる天候で、弱風~微風、2日目は朝方の雨が残ってその後曇りとなり、順風からやや強風。両日ともにレースごとに風が振れるコンディションであったが、1日目に3レース、2日目に2レースの計5レースを予定通り行うことができ、エキサイティングな熱戦を繰り広げた。
コースは、昨年までは、1つのコースと「あらかじめ短縮されたコース」を設定していたが、今回からは、帆走指示書に「コース1」(上→サイド→下→上→下→上→下流し込みフィニッシュ)と「コース2」(上→サイド→下→上→下流し込みフィニッシュ)の2つのコースを設定し、どちらで行うかをスタート時の旗の掲揚で告知することとした。
[第1レース](第1日目)
第1日目は、朝方は風が弱く、30分ほど様子を見ていたが、天候は変わらないとの判断のもと、レースを行うこととなり、第1レースは11:40にスタートした。下マークから上マークまでの距離が609mのコースで、コース2で行われた。コースの距離は、約2600m。
あまり強くない風の中、一線に揃ったスタートで、リコール艇も2艇あったが、解消してスタートした。
飛び出したのはKSCの1131国分艇で、約6分で第1マーク(上)をトップ回航した。その後は神奈川県庁の1151佐々木艇、USCの1132佐々木艇、新しいセールを搭載して今回のシリーズで快調なセーリングを見せた日本精工チームの1141菅沼艇、KSCの常勝1140小山田艇がほとんど差が無く回航、さらに、神奈川県庁の女性スキッパー1135小松艇、青学OG・OBチームの1098小俣艇、スキッパーとクルーの合計年齢が135歳というKSCの大ベテラン1145上田艇が続いた。
その後、第2マーク(サイド)、第3マーク(下)、第4マーク(上)まではこれらの艇がマークごとに順位を変える大熱戦となった。しかし、第4マークからフィニッシュまでのコースでは、風が南に振れて、ランニングのコースがアビームのコースになってしまうと、ジェネカースピンの威力を発揮した1140号艇がみるみる他艇を追い抜き、2位と2分近くの差をつけて、トップでフィニッシュした。2位は1151号艇、続いて1131号艇、1135号艇、1051神出艇が僅差でフィニッシュした。後半の風の振れがジェネカースピンを搭載する艇に有利に働いたレースであった。
トップのスタートからフィニッシュまでは39分、その9分後にラスト艇がフィニッシュした。
[第2レース](第1日目)
第2レースは、風向が変わったために、マークを打ち直してコースを再設定して、13:07にスタートした。風が弱くなり、下マークから上マークまでの距離が473mのコースで、コース2で行われた。コースの距離は、約2000m。
第1マーク(上)では、1141号艇が約12分でトップで回航した。続いてリコールして遅れたにも拘わらず1151号艇が2位で、続いて1098号艇、1145号艇、1135号艇、1131号艇、1140号艇、1051号艇、1132号艇、味の素ヨットクラブの女性スキッパー艇2艇(1137増田艇、1133高桑艇)まで、2分間で全艇が回航した。
この後、第3マーク(下)では、1151号艇がトップに立ち、以後トップを譲らずに、フィニッシュした。2位には、リコールの遅れを取り戻した1140号艇、3位には、1141号艇、続いて、昔とった杵柄を取り戻した1145号艇、1132号艇がフィニッシュした。
トップのスタートからフィニッシュまでは32分、その5分後にラスト艇がフィニッシュした。
K16クラスの最近の傾向では、新しいセールの搭載、フィッティングの改善、セーリング技術の向上によって、クラス全体が底上げされて、上位艇と下位艇の差が縮まっている。このレースでは、後半、また風が南西へシフトし、風も落ちて微風になったが、約2000mの距離で、トップからラストまでは5分差であり、最近の傾向を表したレースであった。
[第3レース](第1日目)
第3レースは、また風向が変わったために、マークを打ち直してコースを再々設定して、14:20にスタートした。風の強さは少し戻り、下マークから上マークまでの距離が532mのコースで、長い方のコース1で行われた。コースの距離は、約3400m。
第1マーク(上)では、今回好調な1141号艇がとトップで回航したが、続いて1145号艇、1098号艇、1140号艇、1135号艇、1051号艇が僅差で回航した。しかしその後の第2マーク(サイド)から第3マーク(下)のコースでジェネカースピンを駆使した1140号艇がトップに立ち、その後もトップを譲らず、2位以下と2分の差をつけてフィニッシュした。2位には、第1マークでは5位だったが、マーク回航ごとに順位を上げた1135号艇、3位には第1マークをトップで回航した1141号艇が、1140号艇、1135号艇とデッドヒートを行ってフィニッシュした。4位以下は3位までとやや離れたものの、1098号艇、1145号艇、1051号艇、1131号艇、1133号艇、1137号艇の順にフィニッシュした。
トップのスタートからフィニッシュまでは42分、その8分後にラスト艇がフィニッシュした。
このレースでは、1151号艇は乗員の都合のためにDNS、1132号艇はやはり乗員の仕事の都合でDNFとなり、残念であった。
第1日目は、微風~弱風の中で予定の3レースを行い、夜には例年通り、江ノ島のヨットハウスでパーティが行われ、第2日目の健闘を誓って散会した。
[第4レース](第2日目)
第2日目の10月7日は、朝方から雨で強風のため、少し風待ちを行った。その後一時雨がやみ、風も安定したので、11:15に第4レースがスタートした。このレースは、コース1で行われた。コースの距離は、約3400m。
前日とは打って変わった北東の強めの風のコンディションで、沈艇も出るレースであった。こうした中、トップになったのは1140号艇。第2マーク(サイド)でトップに立った後、他を寄せ付けない安定したセーリングで、スタートから40分後にフィニッシュした。1131号艇と1135号艇は、マークごとに2位と3位の順位を入れ替える激しいレースを行ったが、結局、2位に1131号艇、15秒差で3位に1135号艇が入った。4位以下は1098号艇、1151号艇、1145号艇、1051号艇、昨日とはスキッパーが交代した1133江原艇、そして沈をして遅てしまった1141河村艇(昨日とはスキッパー交代)が、トップから6分以内にフィニッシュした。
変事はこの後起きた。1132号艇が、最後のフィニッシュラインへの下りのコースでスピンを張ったまま沈をした。なかなか起こせなかったところ、潮の影響もあってフィニッシュライン方向へ流され、沈したまま、マークタッチすることもなく、フィニッシュラインを通過して流されていった。これをフィニッシュと認めるか否かが、大問題となった。両日とも本部船に乗り組んでいただいた関東学連プロテスト委員の中島菊冶氏に、ルールを検討していただき、さらにその場でJSAFのプロテスト委員会への問い合わせを行っていただき、結局「泳いで艇の方向を変える等の行為が無ければ、沈したままでもフィニッシュと認める」との結論に達し、9位から3分遅れて10位でのフィニッシュとなった。経験豊富な中島氏をもってしても、このようなケースは前代未聞であった。11位はやはり沈をした1137号艇が(この艇は沈から起こした後で)フィニッシュした。
トップのスタートからフィニッシュまでは40分、その13分後にラスト艇がフィニッシュした。
[第5レース](第2日目)
第5レースは、風向が変わったために、マークを打ち直してコースを再設定して、12:32スタートした。このレースは、コース1で行われた。コースの距離は、約3400m。
第4レースの途中では雨が降ることもあったが、このレースではようやく雨がやみ、風は少し強くなった。
こうした中、1131号艇、1151号艇、1140号艇がトップ争いを繰り広げ、さらに1135号艇、1098号艇、1141号艇が僅差で続き、ブローで9m/sの風が吹く中での大熱戦となった。結局、トップは1131号艇、2位は30秒差で1151号艇、3位は1140号艇、続いて1135号艇、1098号艇、1141号艇がトップから4分以内にフィニッシュした。
沈した艇も数艇あったが、特に1137号艇はタイムリミット(トップのフィニッシュから20分)まで20秒というタイムでフィニッシュした。1137号艇は、第4レースでも沈した艇を起こしてフィニッシュした。軽量の女性ペアが乗り組んでおり、沈を起こすのは大変だったが、諦めることなく、果敢にチャレンジして、両レースともフィニッシュを果たした。
トップのスタートからフィニッシュまでは37分。トップ艇フィニッシュ後20分でラスト艇がフィニッシュした。
第4レースで沈したままフィニッシュした1132号艇は、このレースは残念ながらDNSであった。
15:30からハーバーにて表彰式を行い、散会した。今回は、風向の変化はあったが、そこそこの風が吹き、事故もなく、日程通り5レースを行って。無事にシリーズを終了した。
[総評]
総合順位では、KSCの1140小山田艇が、他を寄せ付けぬ強さで、優勝した。この艇は、何度も優勝しているが、スキッパーとクルーの合計年齢では110歳を超えている。それでも、アビームにおけるジェネカースピンの威力も含め、圧倒的な強さを見せつけた。
2位は昨年のチャンピオンの神奈川県庁の1151佐々木艇。2日目に調子を上げた協会理事長のKSC1131国分艇は、同得点のタイをといた結果、3位となった。神奈川県庁の1135小松艇は、同得点ながら惜しくも4位となった。5位は、ニューセールに変えて快調なセーリングを行った日本精工チームの1141菅沼・河村艇が入った。
特別賞は、レディース・スキッパーズ賞が女性スキッパー最上位の1135小松艇に(小松氏は2009年の全日本チャンピオン)。
K16賞は女性ペアで最上位となった青学OGの1098小俣・北郷艇に贈られた。
今回は、風の強さはまだ良かったが、ほとんどのレースでレース後半に風向が振れるというコンディションであった。このため、ランニングのコースがアビームになったりして、ジェネカースピン搭載艇に有利に働く局面もあった。
ここのところ、くろしおヨットクラブの1050号艇(今回は不参加)、USCの1132号艇、1051神出艇と、以前からの参加常連艇が続々とニュープランの新しいセールに変え、どの艇も快調なセーリングを見せている。今回は、日本精工チームの1141号艇がニュープランのセールで臨み、快調なセーリングを見せた。どの艇も、ニュープランのセールに適したフィッティングを研究した成果である。
ジェネカースピン、ニュープランのセール等、K16クラスは、同時開催の国際14フッタークラスに習い、着々と進化を遂げている。日本国内で毎年チームレースを開催しているのもK16クラスだけである。4人乗りのブルーウォーターにも使用できるが、レース艇としてもチャレンジングなK16クラスならではの柔軟性である。
今後とも、乗って楽しいK16クラスのコンセプトを維持しながら、艇も進化させ、有意義なクラス活動を続けていきたい。
今回の全日本選手権開催にあたっては、神奈川県セーリング連盟、江の島ヨットクラブ、アツデン㈱、横浜マリン石油㈱、横浜ボート㈲、㈲岡本造船所、スターモア化粧品㈱、をはじめとする関係各位に多大なご支援・ご後援をいただいた。さらに昨年の2月に亡くなられた、K16クラスの設計者である熊沢時寛先生のご家族からも、賞品等の多大なご支援をいただいた。ご支援・ご後援をいただいた皆様に厚く御礼申し上げ、今大会の報告を終わります。
レースレポート 入谷和彦
コメント
コメントを投稿