2011年度 第47回全日本K16級選手権

 K16クラス最大のイベントである第47回全日本選手権大会が、江ノ島ヨットハーバーをベースとして、10月8日~9日の2日間で開催された。今回も、国際14フッタークラス全日本選手権との共同開催で行われた。

今年は、両日とも天候は晴れだったが、風が弱く風向も振れ、出場の選手には良いコンディションではなかった。1日目に3レース、2日目には2レース開催の予定であったが、後述するアクシデントで第4レースがノーレースとなり、計4レースを行った。出艇数は、諸般の事情で10艇となってしまい、近年の全日本選手権では最も少ない出艇数であったが、少数精鋭の中で熱戦を繰り広げた。



[第1レース](第1日目)
第1日目は、朝方から風が弱く、30分ほど様子を見ていたが、天候は変わらないとの判断のもと、レースを行うこととなり、第1レースは11:45にスタートした。コースは、昨年と同じく下スタートで、「あらかじめ短縮されたコース(上→サイド→下→上→下流し込みフィニッシュ)」で行われた。
スタート前後で風向が振れる難しいコンディションの中、飛び出したのは神奈川県庁の1151佐々木艇で、第1マーク(上)では2位に1分差をつけてトップ回航し、その後、風が振れてもトップを譲らず、2位に3分以上の差をつけてフィニッシュした。1151号艇はもともと艇速があるが、前週の練習でフィッティングを調整し、上り角度が格段に改善したため、他を寄せ付けないセーリングを見せた。
2位以下はマークごとに順位が変わる混戦であったが、結局2位はやはり神奈川県庁の1135山崎艇が入り、神奈川県庁の1-2フィニッシュとなった。3位は30年以上のK16セーラーであるベテランの1051神出艇、4位は、前回の8月の熊沢杯チームレースでマストが折れ、今回のレースにギリギリで修理が間に合ったKSCの1131国分艇、以下、KSCの1140小山田艇、USCの1132加藤艇、味の素ヨット部の1133江原艇が続いた。
3位から7位までは2分間の間のフィニッシュであり、微風~弱風の中での熱い戦いであった。
トップのスタートからフィニッシュまでは28分、その11分後にラスト艇がフィニッシュした。
[第2レース](第1日目)
第2レースは、風向が変わったために、マークを打ち直してコースを再設定して行われた。風は弱風~微風で、「あらかじめ短縮されたコース」で行われた。
第1マーク(上)では、リコールでスタートが遅れたにもかかわらず、1151号艇がトップ回航、続いて1135号艇が回航し、またも神奈川県庁の上位独占かと思われたが、その後、第3マーク(下)から第4マーク(上)のコースで、常勝1140号艇が意地を見せて2位と1分半の差をつけてトップに立ち、そのままトップでフィニッシュした。2位と3位は神奈川県庁の1135号艇と1151号艇で、トップは譲ったものの、今回のシリーズにおける県庁チームの好調さを見せつけた。以下は、1131号艇、くろしおYCとUSCの混合チームの1050峰島艇が続いた。
トップのスタートからフィニッシュまでは33分、その17分後にラスト艇がフィニッシュした。

[第3レース](第1日目)
第3レースは、第2レースに引き続き、14:15スタート。このレースは少し風が吹いてきたため、フルコース(上→サイド→下→上→下→上→下流し込みフィニッシュ)で行われたが、第1レース後半で南に振れた風がまた東へ戻り、コース取りが明暗を分けるレースとなった。
第1マーク(上)では、1051号艇、1151号艇、1050号艇、1140号艇が僅差で回航した。しかしその後の第2マーク(サイド)から第3マーク(下)のコースで1151号艇がトップに立ち、その後も2位以下との差を広げ、2位と4分以上の差をつけてフィニッシュした。2位には、第1マークでは8位だったにもかかわらず、上りのコースで一挙にごぼう抜きで2位になった1135号艇が入り、第1レースに続いて、神奈川県庁チームの1-2フィニッシュとなった。
3位と4位は1140号艇と1051号艇。この2艇は県庁の2艇をかなり追い上げたが、およばなかった。5位以下には、1050号艇、1131号艇、1133号艇が僅差で滑り込んだ。
トップのスタートからフィニッシュまでは31分、その11分後にラスト艇がフィニッシュした。
第1日目は、微風~弱風の中で予定の3レースを行い、夜には例年通り、江ノ島のヨットハウスでパーティが行われ、第2日目の健闘を誓って散会した。

[第4レース](第2日目)
第2日目の10月9日は、北西の風が吹き、良い風が期待され、11:05に第4レースがスタートした。しかし、A海面で北西に上マークのコースをとったため、サイドマークは江の島寄りの、ディンギーが多数航行する位置に設定することになり、さらには、葉山のえぼし回航のクルーザーレースの一団がこの海域を通過し、大混雑のレースコースになってしまった。そして、このクルーザーの一団にサイドマークがひっかけられ、折からの強い潮流のため、南西の定置網まで流されるというアクシデントを招いてしまった。10分先にスタ-トした国際14フッターのレース艇2艇が、流されたサイドマークを回航して定置網に引っかかって沈してしまい、K16のレース艇が到達する頃には回航できる状態ではなくなり、このレースは、ノーレースとなった。
漁師との一連の交渉の結果、マークは運よく網にひっかからずに回収することができ、K16のレース艇も損傷はなかったが、定置網にひっかかって沈した国際14フッターの2艇は、艇が損傷してしまった。
帆走指示書に従ったコース設定ではあったが、今後のレース運営に課題を残す結果となった。

[第5レース](第2日目)
サイドマークの回収等に時間をとられ、また風が弱くなったためにマークを打ち直してコースを変更し、第5レースは13:30にスタートした。しかし、スタート直前から無風に近い状態になり、また江の島寄りのコースは南西への潮流が強く、30分たってもトップ艇が第1マーク(上)に到着せず、またもやノーレースとなりそうな状況になった。
しかし、トップ艇がサイドマークに近づいた頃から、大きく南に振れた風が吹き始め、レース艇が走り始めた。第2マーク(サイド)から第3マーク(上)のコースが上りコースとなるような状況になってしまったが、本部船が第4マーク(上)に移動し、最短の4レグにコース短縮を行って、90分のタイムリミット以内にトップ艇がフィニッシュすることができ、レースは成立した。
しかし、このようなコンディションの中でも、135号艇、1151号艇が1位と2位で入り、今回のシリーズで成立した4レース中3レースで神奈川県庁チームが1-2フィニッシュするという快挙を成し遂げた。
3位はUSCの1132海上艇、4位は1051号艇、5位は1050佐々木艇であった。
トップのスタートからフィニッシュまでは77分。トップ艇フィニッシュ後13分でラスト艇がフィニッシュした。
風が吹き始めたため、全艇が自力でハーバーに帰港し、16:30からハーバーにて表彰式を行い、散会した。今回は、コンディションも悪く、アクシデントによるノーレースもあったが、大きな事故もなく、何とかシリーズを終えた。




[総評]
総合順位では、神奈川県庁の1151佐々木艇と1135山崎艇が同得点となり、国際セーリング規則に則ってタイをといた結果、1位の回数の多い1151号艇が優勝となった。総合順位でも、県庁が1位と2位をとり、県庁チームの好調さを見せつけたシリーズとなった。3位は昨年のチャンピオンである1140小山田艇、4位は第2レースの9位が捨てレースにならなかった1051神出艇、5位は1131国分艇であった。
K16賞は、女性クルー(1133号艇)と女性スキッパー(1137号艇)が乗り組んだ、味の素ヨット部チームの2艇に贈られた。

優勝チーム
今回は、神奈川県庁チームが圧倒的な強さを見せた結果となった。1151号艇の佐々木氏は、艇の性能を存分に引き出して、優勝の栄冠をつかんだ。1135号艇のスキッパーの山崎氏は、2008年の全日本選手権では、女性スキッパーの中内氏のクルーとして乗り組んで優勝に導いた大ベテランであり、今回はスキッパーとしての実力も遺憾なく発揮し、2位が3回、1位が1回という安定した強さを見せた。
来年に向けて、各選手は、打倒県庁チームを旗印に練習に励み、またエキサイティングなレースを戦うことを願いたい。
なお、今回の全日本選手権では、レース運営面での課題を残した。ノーレースとなった第4レースでは、混雑した地域でのコース設定やマーク監視の問題、その他、2つのクラスのレースを同じ海面で行う場合に、クラスごとに異なる指示を出す場合の告知方法、風が無くなった場合のレース続行等の課題について、一つずつ改善し、より質の高いレースを運営することに努めたい。
今回の全日本選手権開催にあたっては、神奈川県セーリング連盟、江の島ヨットクラブ、アツデン㈱、横浜ボート㈲、㈲岡本造船所、スターモア化粧品㈱、をはじめとする関係各位に多大なご支援・ご後援をいただいた。さらに今年の2月に亡くなられた、K16クラスの設計者である熊沢時寛先生のご家族からも、賞品等の多大なご支援をいただいた。ご支援・ご後援をいただいた皆様に厚く御礼申し上げ、今大会の報告を終わります。

記:入谷和彦

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